Friday, December 8, 2017


"モモMomo, ミヒャエル・エンデ:Michael Ende" 

a tortoise
のそのそとカメはもどってきました。
やっとモモのまえにつくと、その甲羅(こうら)に
うしろむきにススメ」ということばが浮かびでました。
Slowly the tortoise retracted its steps.
When it came to a halt in front of her, its shell bore the following advice:
‘WALK BACKWARDs’

モモはそうやってみました。
うしろむきになって歩いてみたのです。
すると、さっきまであんなにすすむのが大変だったのに、
こんどは、なんの苦も無くすすめるではありませんか。
でも、そうしているあいだに起こったことがまた、なんとも奇妙なのです。
頭で考えることも逆向き。
息をするのも逆向き。
なにかを感じるのも逆向き・・。
要するに、なにもかにもが「逆向き」なのです。
Momo tried it. She turned around and walked backwards, 
and all at once she was progressing up the lane with the utmost ease.
At the same time, something most peculiar happened to her.
While walking backwards, 
she was also thinking, breathing and feeling backwards 
– living backwards, and all contradicted in fact. 

**************

カメにあたしをつれてこさせたのは、なぜなの?」
モモは、カップを置きながら聞きました。
灰色の男たちから守るためだよ。」
マイスター・ホラはまじめな顔でこたえました。
“Why did you send the tortoise to fetch me?”
Momo put her cup down and asked,
“To protect you from the men in grey.
Professor Hora replied gravely.


「彼らは、お前を探しまわっている。安全なところは、ここしかないんだ。」
「あの人たちは、あたしになにかするつもりなのかしら?」
モモはびっくりしてききました。
「そうらしいね。」マイスター・ホラはためいきをつきました。
「どうして?」
「おまえをおそれているんだ。なにしろおまえは、彼等にとっていちばんこまることをしたんだからね。」
「あたし、なにもしやしなかったわ。」
「いや、したんだよ。彼らのなかまのひとりに、本当のことを白状させてしまった。そしてそのことを友達にしゃべった。しかもみんなで、『灰色の男たちの秘密』を大人たちに知らせようとした。これだけすれば、おまえが彼らの不倶戴天の敵になるのにじゅうぶんだと思わないかね?」

「でも、カメとあたしは、町の真ん中を通ってきたのよ。もしあの人たちがさがしまわっているんなら、簡単に見つけられたはずじゃない?それに、とってものろのろ歩いてきたんですもの。」
‘But we walked right center through the city, the tortoise and I,’
Momo said.
‘If they were searching for me everywhere, they could easily have caught us. We weren’t going fast.”

マイスター・ホラは、足元にまたきていたカメをひざにだきあげて、首筋をなでてやりました。
「どうかね、カシオぺイア?」
と、笑いながらききました。
あの連中は、おまえたちをつかまえられたはずかね?
イや、ゼッタイ!」という文字があらわれました
その字は、とてもゆかいそうにきらめいていて、まるでクスクス笑っているようです。
The tortoise had stationed herself at the professor’s feet.
He took her on his lap and tickled her under the chin.
‘Well, Cassiopeia,’ he said with a smile, ‘what your opinion?
Could they have caught you?’
The word ‘NEVER!’ appeared like lightening on Cassiopeia’s shell, and the letters flickered so merrily that Momo almost thought she detected a dry little chuckle.

「カシオペイアはね、」マイスター・ホラは説明しました。
「すこし先の未来をみとおせるのだ。ずっとさきまでとはいかないが、それでも半時間ぐらいさきのことならね。」
「セイカクニ!」と、カメの甲羅に文字がでました。
「ごめん、ごめん」
マイスター・ホラは訂正しました。

「きっちり半時間だ。30分先までにおこることなら、確実に前もってわかるんだよ。だから、もちろん、たとえば灰色の男に出くわすかどうかも、ちゃんとわかるんだ。」
「まあ、すごくべんりなのね!」モモは感心して言いました。
「どこで灰色の男にであうかがわかってれば、別の道を行けばいいんでしょ!」
「いや、ことはそんなにかんたんじゃないんだよ。まえもってわかるといっても、起こることを変更はできない。本当に起こることだけがわかるにすぎないんだよ。」
「それじゃ、未来が見とおせたって、何の役にもたたないじゃないの。」
「いや、そうでもないよ。たとえばこれこれの道を行けば灰色の男に出会わないということがわかっていたのだ。それだって、なかなか役にたつのじゃないかね?」

「これが星の時間をあらわす時計だ。」
マイスター・ホラはいいました。
「めったにあらわれないような星の時間を、確実におしえてくれる時計なんだが、ちょうどいまそういう1時間がはじまったとこなのだよ。」
"This watch is known as a crisimograph. " 
said Professor Hora,
"It accurately records crises in the history of mankind, and one of these rare occurrence has just begun" 

「星の時間て、なんなの?」とモモはききました。

「いいかい、宇宙の進行には、あるとくべつな瞬間というものがときどきあるんだ。」
マイスター・ホラは説明しました。
「それはね、あらゆる物体も生物も、はるか天空のかなたの星々にいたるまで、まったく一回きりしかおこりえないようなやり方で、互いに働きあうような瞬間のことだ。そういうときには、あとにもさきにもありえないような事態がおこることになるんだよ。
At certain junctures in the course of existence, unique moments occur when everyone and everything, even the most distant stars, combine to bring about something that could not have happened before and will never happen again.

God did not play dice with the universe.
The Lord is not capricious in his actions.
(Albert Einstein)

だが残念ながら、人間はたいていその瞬間を利用することを知らない。だから星の時間は気づかれないままにすぎさってしまうことがおおいのだ。

けれど、もし気がつく人がだれかいれば、そういうときには、世の中に大きなことがおこるのだよ
When someone does recognize them, however, great things happen in the world.

「きっと、そのためには」とモモはいいました。「そういう時計がいるのね。」
マイスター・ホラは笑って頭をふりました。
「時計があるだけじゃダメなんだ。この時計の読み方も知らなくては。」
そしてまた時計のふたをすると、ポケットにしまいました。


「でも、あたしの行ってきたところは、いったいなんなの?」
「おまえじしんの心のなかだ。」
マイスター・ホラはそう言って、モモのもじゃもじゃの頭をやさしくなでました。

「あたし、いつまでここにいていいの?」
「友だちのところにかえりたくなるまで、いいんだよ。」
「でも、星が話してくれたことを、友達に話してあげるのはかまわないんでしょ?」

「それはいいよ。だが、できないだろうね。」
「どうして?」
「それを話すためには、まずおまえのなかで、ことばが熟さなくてはいけないからだ。」
‘You may, but you won’t be able to.’
‘’Why not?’
‘Because, before you can, the words must take root inside you.’

「いいかね、地球が太陽をひとめぐりするあいだ、土のなかで眠って芽を出す日を待っている種のように、待つことだ。ことばがおまえのなかで熟し切るまでには、それくらい長い時(とき)がひつようなのだよ。」
‘I mean, wait like a seed that must slumber in the earth before it can sprout. That’s how long the words will take to grow up inside you. Is that what you want?’

Hora=hour=時間 cf.horoscope

 DNAs of MOMO / Ochikubo Story / Peace is base on "RA"

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