台湾の脱原発
中国新聞 2017年1月16日 社説
台湾が、2025年までに「原発ゼロ」を目指すことを決めた。
現在3か所に6基ある原子炉は、順次廃炉とする方針だ。
脱原発の流れは、欧州で広がりつつあるが、台湾で実現すれば、アジアでは初めてとなる。
台湾は資源に乏しく、地震が多い地域である。
日本と似た環境でありながら、いち早く脱原発を決めた動きに注目したい。
台湾で原発は、発電容量の16%を占める。
計画では、再生エネルギーの割合を現在の4%から、25年までに20%引き上げて、原発の代替とする。
離島で太陽光発電や風力発電を積極的に進め、改訂に送電線を敷いて電力を送る計画もあるという。
再生可能エネルギーの普及がスムーズに進むかどうかは予断を許さない。
技術的な課題も残されていよう。
電気料金の値上がりを不安視する声もある。
それでも脱原発を決めたのは、東京電力福島第一原発の事故を教訓としようとする民意があったからにほかならない。
想定外の事態で事故が起きれば、放射性物質は広い範囲を汚染し、将来の世代にも影響を及ぼしかねない。
原発の根源的なリスクを直視し、多くの市民が「ノー」を突きつけて大規模なデモを展開した結果であろう。
また民意に呼応した政治の動きも大きな原動力となった。
昨年1月の総選挙では、民主進歩党(民進党)が「原発のない郷土」を公約に掲げて当選し、対する国民党も脱原発を支持してきた。
こうした民意を重んじる政治の力が、今回の流れを確固たるものとしたと言える。
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